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【セレクションセール2022】総括
2001年に特別市場から改称されただけでなく、開催時期も7月となったセレクションセール。その歴史の中で大きな変化があったと言えるのが、2011年における当歳市場の中止、そして2日間開催で行われた1歳市場である。
だが、結果としてその試みが功を奏することはなかった。2011年のセレクションセールには、史上最多となる360頭が上場され、売却頭数も201頭を数えたものの、売却率は55.83%と、前年(57.55%、1歳市場の売却率)を割り込み、1頭あたりの平均価格である約873万3333円は、前年(約1034万8936円、1歳市場の平均価格)から数字を落とした。
総売上額は17億5540万円を記録したものの、それでも売上目標には達することなく、2012年からは、より選抜基準を厳しくすることで上場頭数を絞り、その結果、上場頭数は約150頭の減となり、開催も1日だけとなった。
セレクションセール上場という狭き門を目指すべく、生産者は血統、馬体で高い評価を受けるような良質馬を、生産の一つの目標としていくようになる。その高い志を購買者も評価していくようになり、セールの売却率、平均価格は確実にアップしていく。前年の2021年には、1日開催となってから過去最高の売却率(86.32%)、1頭あたりの平均価格(約1807万2772円)を記録。総売上額の36億5070万円もセレクションセールレコードを更新した。
その右肩上がりの中で、主催者である日高軽種馬農業協同組合は、2日間開催へと再び舵を切った。
生産者にとっては上場への門戸が広がっただけでなく、購買者にとっても選択肢と落札の機会がさらに広がった。
そうは思いながらも、やはり、2011年の売却率の減少を見てきただけに、開催前には不安があった。しかも、今年のセレクションセールはせり開催前日となる25日に比較展示を行っており、購買関係者によっては3日間に渡って、会場へ足を運ぶ必要もあった。
筆者はその展示当日、そしてせり1日目、2日目と、開催1時間前に到着したにも関わらず、会場内の駐車場にはまだ空きがあった。それまでのセレクションセールはこの時間でも既に満車となっており、臨時駐車場へと誘導されていた。果たして会場内にはどれだけの購買関係者が来ているのか、不安になったのも事実である。
しかし、その不安は杞憂に終わった。事前展示では至る所に購買関係者の姿があり、その中で、せりの注目馬は幾度となく引き馬を行っていた。またせり当日、2日目と空きが目立っていた会場内の駐車場も、時間が経つにつれて満車となり、臨時駐車場に誘導される車の数が増えていったという。
2日間開催による選択肢の広さは、早い時間から足を運ぶのではなく、お目当ての上場馬が出てくる時間、もしくは日程を見計らってセール会場へやってくるというスタイルへと変わったのかもしれない。
156頭の1歳馬が上場された1日目。今年のセレクションセール最初の上場馬となった、上場番号1番のセシリア2021(牡、父ドゥラメンテ)は、4400万円で落札とせりを勢いづける結果になったにも関わらず、その後は主取の馬も目立つようになっていく。
20頭のせり終了時点での売却率は65%にとどまったものの、ここから落札が続いていき、売却率を大きく回復。その中から5400万円の評価を受けた上場番号39番のエテルナミノル2021(牡、父カリフォルニアクローム)、4700万円の評価を受けた上場番号63番のピュアアイズ2021(牡、キズナ)と高額落札馬も目立っていくようになる。
さらなる高額落札馬の期待も高まっていく中で、上場番号111番のゴールドチェイス2021(牡、父モーリス)が6000万円で落札。上場番号125番のディアレストトリックスキ2021(牡、父シニスターミニスター)が、この日の最高額の取引馬となる、6200万円の評価を受けた。
この後も4千万円台、5千万円台の取引馬が現れただけでなく、一日を通して平均価格を大きく押し上げるような落札馬が誕生。最終的な売却率は84.62%と前年(86.32%)に及ばなかったものの、一頭あたりの平均価格は約1918万9394円と前年(約1807万2772円)超えを果たした。一日目の売却総額は25億3300万円となっている。
1日目での好況を受けた2日目も同様の活発な取引が期待されて、結果としてはその期待以上のストロングセールとなった。
前日より少ない145頭の上場となったが、この日、最初の上場馬となったマルヨパトリオット2021(牡、父ドレフォン)から連続落札が続いていく。売却率は90%以上で推移していく中、上場番号169番のスマッシュハート2021(牡、父ブリックスアンドモルタル)が6000万円で落札。
そして、桜花賞馬を母に持つ上場番号204番のレーヌミノル2021(牡、父ブリックスアンドモルタル)が、今年のセレクションセールにおける最高額となる、6600万円で取引が行われた。
この日は、上場馬号246番のマルモリバニー2021(牡、父シルバーステート)が6200万円、上場番号268番のマイユクール2021(牡、父キズナ)が5400万円で落札されるなど、5000万円を超えるような高額馬の誕生も目立っていた。
それだけでなく、上場馬のほぼ全てに最初の一声がかかり続け、売却率も高い水準でキープ。この日、最後の上場馬となった上場番号282番のムーンエクスプレス2021(牡、父サンダースノー)に鑑定人のハンマーが落とされた時、売却率は再び90%を突破し、90.34%を記録。2日目の売却総額は23億2000万円、1頭あたりの平均価格は約1770万9924円となった。
2日間を総合した数字でも、売却総額では過去最高となる48億5300万円を記録。売却率の87.38%、1頭あたりの平均価格である約1845万2471円もまた、前年を超えるセールレコードとなった。
このストロングセールを盛り上げる要因となったのは、987名を数えた購買登録者の数であり、この数字はセレクションセールの単独開催(2020年の1454名はセレクションセールとサマーセールの同時開催)では過去最多となっている。
その中でオンラインの登録者数は60名となり、50頭がビッドされた中で、昨年(8頭)を越える11頭が落札と、オンラインシステムを用いたせり参加もまた、購買者に浸透しただけでなく、好況に沸いたせりを盛り上げる結果となった。
セール終了後に記者会見へと臨んだ古川雅且市場長は、
「社会情勢や新型コロナウイルス感染症による影響も考慮していただけに、正直、ここまでのセール結果となったのは驚きでした。また、2日間開催が購買者の方に受け入れられるかの不安もありましたが、それを全てクリアするような売却成績になったと思います」
と話した。2日間開催にあたっては、購買関係者の中から前日展示を含めて、3日間もせり会場に滞在することの難しさも聞かれた。
その一方で、両日ともに150頭程度の上場となったことで、せりの終了時間は午後3時台となり、札幌や千歳といった遠方から訪れていた関係者にとっては、現地での宿泊の心配をしなくても良くなったどころか、夕方には新千歳空港に戻れると話す購買関係者もいた。
大盛況に終わったセレクションセールであるが、2011年の2日間開催と大きく違うのは、血統や馬体、そして配合された種牡馬など、まさに「セレクション」された上場馬がそろっていたことに他ならない。
それは良質な馬を生産すべく、日々、情熱を注いできた生産者あってのことであり、そこに、せりに向けて最高のコンディションへと整えたコンサイナーの力でもある。
主催者である日高軽種馬農業協同組合の職員たちが、充分な準備をしてきただけでなく、せり当日にも円滑な進行を行ってきた成果が、2日間開催のセールを成功へと導いた。
8月22日から26日までの5日間、同じ北海道市場では、国内最大規模の1歳市場であるサマーセールも開催される。セレクションセールの好況を追い風としそうなサマーセールもまた、過去最高の売却総額となった前年を超えるような取引が期待できそうだ。
注記:金額は、全て税抜金額
(文)村本浩平
2022年7月28日16時0分
(JRA-VAN)