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【セレクトセール2021】2日目の結果(文:村本浩平)

午前8時。ノーザンホースパークの展示会場に、これからせりへと臨む当歳馬と、離乳を控えた繁殖牝馬がともに姿を見せる。

昨日は一日中降り続いていた雨も止み、森林馬道の中で仲睦まじく並ぶ親仔の姿は、いつ見ても微笑ましい。この展示のために早朝からの移動を余儀なくされたこともあるのか、上場馬たちの中には瞼(まぶた)を落としそうになっている馬もいるのだが、それでもバイヤーが近くに来ると顔を上げて、可能性の塊と言えるような馬体を披露していく。

可能性という意味において、この当歳セッションで注目されていたのが、この世代が初年度産駒となる新種牡馬の仔たちである。その中でもこの日の最初の上場馬であり、そして最後の上場馬も務めることになったのが、レイデオロの産駒だった。

リザーブなしの上場番号301番として姿を見せたのは、ファイネストシティの2021(牡、父レイデオロ)。半兄が、昨日の1歳セッションで最高額タイの3億円の評価がされたファイネストシティの2020(牡、父ロードカナロア)。母ファイネストシティは、アメリカでBCフィリー&メアスプリントに勝利するなどスプリンターとして名を馳せた名馬。こうした血統背景も、昨日のせりにおける高評価につながったと言える。

ただ、当歳馬は父が種牡馬としては未知数であるレイデオロに替わり、バイヤーの評価がどう変わるのか気になるところでもあったが、結果としてはレイデオロに対する期待感の高さが、1億5000万円という売却額として表れた。

期待感という意味では、昨日の1歳セッションに続き、持込馬に対しても総じて高い評価が与えられていた。

近年の欧州最強馬とうたわれたFrankelの産駒、上場番号329番コールバックの2021(牡)が2億4000万円。米三冠馬American Pharoahの産駒、上場番号337番スウィッチインタイムの2021(牡)が1億5000万円。同じく米三冠馬のJustifyを父に持ち、母は米2歳牝馬チャンピオンという夢の配合馬、上場番号344番カレドニアロードの2021(牡)は1億3500万円で落札されている。

コールバックの2021のせりに付き添っていた矢作芳人調教師は、「父のフランケルっぽくはありませんが、全体的なバランスなど、見るたびに良くなっていく馬だと思いました」

と印象を語っていた。その一方で手堅いセールスが行われていたのが、既に充分すぎるほどの産駒実績を残していた種牡馬の産駒たちだった。

この当歳世代がラストクロップとなったハーツクライの産駒では、上場番号342番シーズアタイガーの2021(牝)が2億円、361番ラヴズオンリーミーの2021(牡)が2億8000万円、391番ラブリーベルナデットの2021(牡)が2億円と、上場馬3頭が全てダブルミリオン(2億円)以上で売買されていく。

1歳セッションでも高額馬が誕生していたエピファネイア産駒では、上場番号366番アルテリテの2021(牡)が2億2000万円。その他にもキズナ、ドゥラメンテ、サトノダイヤモンドの産駒からもミリオンホースが誕生していく中、この日、最初のトリプルミリオン(3億円)ホースとなったのが、上場番号398番ヤンキーローズの2021(牡、父ロードカナロア)。せりが始まってから間もなくして、一気に3億円に電光掲示板が書き換わった。その後も1000万円単位で数字を書き換えていったせりは、3億7000万円で(株)ダノックスが落札した。

改めてポスト・ディープインパクトとなるのは、ロードカナロアだと印象づけられてから、およそ1時間後、せり会場内にどよめきが起こる。上場番号428番セルキスの2021(牡、父キズナ)を、小笹芳央氏が今年のセレクトセールの最高額となる4億1000万円で落札したのだ。言わば、昨日取引されたディープインパクト産駒の取引額を超える金額を、ディープインパクトの後継種牡馬であるキズナの産駒が更新したことにもなった。

電話で取材に応じた小笹氏は、

「今年のセールでは絶対落とすと決めていた1頭がこの馬でした。下見に行ってくれた矢作先生や関係者が口々にこの馬を高く評価していました。落札ができて良かったと思いますが、せりに勝っても、実際のレースに勝たなければいけないと思っています」

とコメントしていた。

小笹氏は、上場番号334番モルガナイトの2021(牡、父レイデオロ)も1億8000万円で落札。

「新種牡馬の産駒が今後の主流となっていく可能性がある中で、血統、そして馬体ともに素晴らしいレイデオロ産駒に可能性を感じています」

と購入の理由を語っていた。この日、上場されたレイデオロ産駒は、上場番号403番リンフォルツァンドの2021(牡)が1億8000万円、459番ルールブリタニアの2021(牡)が1億4500万円で取引されるなど、高額落札馬を送り出しただけでなく、上場馬15頭の全てが売却(欠場1頭)。今後のセレクトセールにおける、主流種牡馬となる可能性を感じさせた。

今年のセレクトセールにおける最後の上場馬となったアイムユアーズの2021(牡、父レイデオロ)。5000万円の一声がかかると、まさに至る所から取引の声がかかり続け、産駒では今日5頭目のミリオン超えの取引馬(1億5000万円)となった。

当歳セッションの落札総額は、史上初の100億円超えとなり、109億2300万円を記録。落札率も、当歳セッションでは史上初めて90%超えとなる92.6%で、こちらもセールレコードとなっている。

2日間の総額の225億5600万円も、もちろんセレクトセールレコードを記録。この結果を受けて取材に臨んだ、日本競走馬協会会長代行を務める吉田照哉氏(社台ファーム代表)は、

「セール前の予想をはるかに超えるようなせり結果となりました。新しいオーナーも参入したことで購買者登録数が増え、それがせりの最初から最後まで、活発な取引に繋がった印象を受けます。当歳セッションでは新種牡馬の産駒を中心に活発な取引が続き、また優秀な繁殖牝馬との配合によって、上場馬のレベルアップにもつながった印象です」

と笑顔で語っていた。

注記:金額は全て税抜き

2021年7月13日21時40分
(JRA-VAN)


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