競馬ニュース速報
【セレクトセール2021】1日目の結果(文:村本浩平)
そぼ降る雨が会場のノーザンホースパーク特設会場に降り続いた、今年のセレクトセール1歳セッション。その悪天候の中でもせり開始前から購買関係者が各牧場ブースへと詰めかけ、入念に最後の下見を行っていた。
だがその雨は、これから始まるせりの熱気を呼び起こそうとした、天からの計らいだったのかもしれない。
今年のセレクトセールを盛り上げる役割を背負った、上場番号1番のゴーマギーゴーの2020が鑑定台に姿を見せる。これまでセレクトセールを、そして日本競馬界を盛り上げてきたディープインパクト産駒にとって、正真正銘のラストクロップ。それにもかかわらずリザーブ価格は設定されておらず、最初の一声に注目が集まった。
鑑定人が、
「ディープインパクト産駒のファイナルカウントダウンです」
と告げてからしばらくして、スポッターが会場内に轟かせた金額は、なんと2億円。その時、会場内からどよめきと感嘆の声が上がる。その後、せりは1000万円単位でせり上がっていき、電光掲示板が3億円に書き換わってからしばらくして、ハンマーが振り落とされた。
落札者は長谷川祐司氏。代理人の竹内啓安さんは、
「最後の世代のディープインパクト産駒というだけでなく、血統、配合、馬の歩きも全てそろっていた馬です。ライバル関係を考えた場合にも、(ディープインパクト産駒であることは)アドバンテージになると思います。ただ、上場番号1番でこれだけの評価は過去になかったかと思いますが、その評価にふさわしい活躍をしてくれると思います」
と語った。この3億円という金額が、今年の1歳セッションの指針となったかのように、その後の上場馬からも次々とミリオンホースが誕生していく。
上場番号から順に、3番のホットチャチャの2020(牝、父ロードカナロア)が1億6000万円、4番のサンタフェチーフの2020(牡、父リアルスティール)が1億6000万円、12番のサンデースマイル2の2020(牡、父ハービンジャー)が1億1000万円、19番のシーウィルレインの2020(牡、父ハーツクライ)が1億6500万円、24番のラッドルチェンドの2020(牡、父ダイワメジャー)が1億6000万円、26番のライツェントの2020(牡、父ルーラーシップ)が1億4000万円で落札されていく。
そしてこの日、2頭目となる2億円超えの取引馬となったのが、上場番号32番のヴィンテージローズの2020(牡)。父のエピファネイアは、このセールで取引され、史上初となる無敗での牝馬三冠制覇を果たしたデアリングタクトと同じ。今年の牡馬クラシック戦線でもエフフォーリアが無敗で皐月賞を勝利しており、クラシックを沸かす種牡馬としての期待感が、産駒の高評価へとつながっていった。
落札者となった藤田晋氏は、ヴィンテージローズの2020を落札する前にも、サンタフェチーフの2020を含めた3頭の上場馬を落札。その後に上場されていた、上場番号46番のベルアリュール2の2020(牡、父ドゥラメンテ)を1億500万円、上場番号60番のローザフェリーチェの2020(牡、父エピファネイア)を1億1000万円で落札するなど、活発な市場をさらに盛り上げていく。
その後に2億円以上の取引馬となったのが、上場番号38番のエピックラヴの2020(牡、父ロードカナロア)。半兄に5勝をあげているミッキーブリランテ、そしてホープフルSの勝ち馬となったダノンザキッドがいる血統馬であり、その2頭の兄弟と縁の深い(株)ダノックスが落札している。
せり開催に当たり、挨拶に立った日本競走馬協会会長代行の吉田照哉氏は、
「社台グループのみならず、日高の生産牧場も優秀な繁殖牝馬を導入しており、それが日本競馬のレベルアップにつながっています」
と話していた。今回の1歳セッションで高額馬が次々と誕生したのは、種牡馬の評価のみならず、良質の繁殖牝馬の価値も評価された取引額であることは間違いない。それは、将来の繁殖候補となりそうな牝馬からも、ミリオンホースが誕生していたことからもうかがえる。
この日、2頭目となるディープインパクト産駒の上場馬となった、上場番号52番のワッツダチャンセズの2020(牝)は、1億2000万円で廣崎利洋HD(株)が落札。この1歳世代が初年度産駒となるサトノダイヤモンド産駒では、上場番号65番のチェリーコレクトの2020(牡)が1億500万円、95番のティッカーコードの2020(牡)が1億5000万円。その他もサトノアラジン、バゴ、ドゥラメンテと種牡馬を問うことなく、ミリオンホースが誕生した。
その中でも総じて高い評価を受けていたのが、次代のリーディングサイヤー候補と言えるロードカナロアの産駒。そして、今シーズンは種付けを行わないまま種牡馬引退を発表したハーツクライの産駒たちだった。
ロードカナロア産駒では、上場番号96番のクイーンズリングの2020(牡)が2億2000万円、100番のファイネストシティの2020(牡)が3億円で落札。また、ハーツクライ産駒では上場番号87番のメジロツボネの2020(牡)が1億6500万円、108番のシルヴァースカヤの2020(牡)が1億3500万円、132番のカラライナの2020(牡)が1億6000万円。141番のイルーシヴウェーヴの2020(牡)が1億2000万円と、ディープインパクト産駒になり替わるかのように、ミリオン以上の取引馬を送り出していく。
この日、3頭目のディープインパクト産駒となった、上場番号130番のジュエルメーカーの2020(牝)こそ主取りとなったが、113番のジペッサの2020(牡、父Justify)、131番のアイムユアーズ2の2020(牡、父Saxon Warrior)と、持ち込み馬の産駒たちが高い評価を受けていく。思えばキングカメハメハもセレクトセールで取引された持ち込み馬であり、血統的にも未来の種牡馬候補としての期待が込められた評価額と言えるのかもしれない。
その後も、上場馬たちには絶えることなく取引の声がかかり続け、落札率は常に90%以上をキープ。平均落札額も5000万円台〜6000万円台という驚異の数字を記録し続ける。上場番号178番のプレシャライジングの2020(牡、キズナ)が1億円、241番のギエムの2020(牡、父シルバーステート)が2億6000万円で取引されたことで、この日、ミリオン以上の取引が行われた種牡馬の数は16頭となった。これまでのセレクトセールを振り返っても聞いたことのないような頭数であり、まさに種牡馬を問わず、高い水準で取引の声がかかり続けた証明とも言える。
この日最後の、そしてセレクトセールに上場されたディープインパクト産駒としても、最後の取引馬となったスイープトウショウの2020(牡)が、2億円の一声で池田豊治氏に落札されていく。1億円以上の取引馬は28頭を数えただけでなく、総売上額の116億3300万円、平均価格の約5150万円、そして落札率の93.4%の全てにおいて、セレクトセールの1歳セッションレコード。まさに記録づくめのストロングセールとなった。
せりの後に記者会見に応じた、日本競走馬協会理事の吉田勝己氏は、
「1頭目の上場馬から息つく暇もなく、すごいセールになったと思います。牧場を問わずに、血統、コンディションの素晴らしい馬が上場されたことで、全体のレベルが上がったのが、このせり成績につながった印象を受けます。新しい購買者の方もせりを盛り上げてくださりましたし、今年から導入したオンラインによる取引も、今後は主流になっていくのではとの印象を受けています。明日の当歳セッションも素晴らしい馬がそろっていますし、いいせりになると思います」
と笑顔を見せていた。
注記:金額は全て税抜き
2021年7月12日21時35分
(JRA-VAN)