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【セレクトセール2020】2日目の結果
セレクトセール当歳セッションの朝は、当歳馬の展示と共に始まる。
この日、会場内の展示場に姿を見せたのは226頭の当歳馬。その傍らには、まだ離乳を終えていない母馬の姿もあった。
早朝からのせり会場への移動や、慣れない場所の展示による気疲れもあるのか、まぶたが落ち始めている当歳馬の姿はとても愛らしく思える。しかしながら、その数時間後にこの愛らしい当歳馬たちには、数千万という高い評価額や、ミリオンホースの称号が与えられていく。
この日、最初の上場馬となったのはスクールミストレスの2020(牡、父ドゥラメンテ)。活発な競り合いの結果、早野誠氏が8600万円で落札すると、そのハンマーの音をきっかけとしたかのように落札ラッシュが始まっていく。
従来のセレクトセールの1歳セッションは、デビューが近づいた安心感も後押しするのか、売却率が高くなる傾向にあった。一方、良血馬をいち早く手に入れたいとの思いも加わってくる当歳セッションは、その年のセールにおける最高額馬が多く誕生していたように、取引額が高くなる傾向が見られていた。
しかしながら、今年の当歳セッションでは取引額もさることながら、せりの開始直後から90%台後半という驚異の売却率をキープしていく。そこに当歳セッションらしい活発な競り合いが加わった結果、ダブルミリオン(2億円)での取引となったのが、ファイナルスコアの2020(牡、父ロードカナロア)だった。
落札した大塚亮一氏は「この牝系には以前から注目していた」と話した後に、
「サンデーサイレンスが入っていない血統背景も含めて、種牡馬としての期待も感じています。今日のせりで一番欲しいと思っていた馬でもあり、この馬が買えたので、今日のせりは成功だと思っています」
と笑顔を見せた。
その後も上場馬たちが次々と落札されていく中で、マラコスタムブラダの2020(牡、父キタサンブラック)が1億9000万円(麻布商事が落札)、カデナダムールの2020(牡、父エピファネイア)が1億2000万円(野田みづき氏が落札)、サマーハの2020(牝、父サトノダイヤモンド)が1億円〔金子真人ホールディングス(株)が落札〕と、ミリオンホースが立て続けに誕生していく。
そのサマーハの2020の父であり、この当歳世代が初年度産駒となるサトノダイヤモンドだけでなく、リアルスティール、マインドユアビスケッツ、サトノクラウン、レッドファルクスといった馬たちの初年度産駒にも、活発な取引の声がかかっていった。
新種牡馬の産駒たちがセールを盛り上げていく中、今年の当歳セッションには、せりを盛り上げる高額馬を送り出してきたディープインパクト産駒、キングカメハメハ産駒の姿がなかった。その2頭に代わって高額馬を送り出したのは、2頭に迫る産駒成績を残していただけでなく、昨日の1歳セッションでも3頭のミリオンホースを送り出していたハーツクライだった。
セレクトセールの出身馬であるヨシダを全兄に持つ、ヒルダズパッションの2020(牡、父ハーツクライ)は最初の一声がかかった瞬間から、スポッター(鑑定人)のコールが立て続けに起こり、あっと言う間に1億円、そして2億円を突破。3億を過ぎてからは緊迫の競り合いが続いたものの、3億8000万円で鑑定人のハンマーが落とされた。
落札した小笹芳央氏は書面を通して、
「今年はこの馬が抜けて素晴らしかったので、何とか落札したいと思っていました。大舞台に立てるように、これからも順調に育ってほしいと思います」
とコメントを寄せた。また、同じハーツクライ産駒ではシーヴの2020(牡)が2億1000万円(三輪ホールディングが落札)、シーズアタイガーの2020(牡)が2億7000万円〔(株)ダノックスが落札〕、スターシップトラッフルズの2020(牡)が1億3500万円(原村正紀氏が落札)など、16頭の落札馬のうち、4頭が1億円以上の取引馬となった。
せりの終盤を迎えてからも、売却率は90%台をキープしていき、当歳セッションで初めての90%超えが見えてきた。また、クイーンビー2の2020(牡、父ドゥラメンテ)が1億4500万円〔(株)ダノックスが落札〕、フリーティングスピリットの2020(牡、父キタサンブラック)と、ミリオンホースが送り出され、ミリオンには届かなくとも7千万円台、8千万円台といった高額馬たちも続々と誕生していく。
お目当ての馬が購入できたからなのか、会場内の購買関係者の数が減り始めてからは、売却率が80%台に割り込んだものの、それでも、今年のセレクトセールで最後の上場馬となるキラモサの2020(牡、父ロードカナロア)が、有終の美を飾るかのように1億4000万円で国本哲秀氏に落札されると、会場内からは拍手が沸き起こった。
当初は新型コロナウイルス感染症による影響もささやかれた、今年のセレクトセールであるが、この当歳セッションでの落札総額は83億3400万円と、過去最高を記録した昨年(97億8400万円)には及ばなかったものの、一昨年の総額(82億5750万円)を上回り、当歳市場では史上3番目の売り上げとなった。また落札率の89.8%は、レコードを記録した昨年と並ぶ数字となっている。
この結果を受けて取材に臨んだ、日本競走馬協会会長代行を務める吉田照哉氏(社台ファーム代表)は、
「三密を防ぐために入場制限をさせていただいたにも関わらず、多くの方にせりへ参加していただきました。(当歳市場は)ディープインパクト産駒の上場がなかったことで、高額馬が出にくくなった印象もありますが、繁殖牝馬のレベルが上がったこともあり、配合種牡馬を選ぶことなく、高い評価が集まっていたと思います。競馬のある限り、このセールは続いていくと思いますし、今後も競馬を愛している購買者の皆さんだけでなく、いい馬を送り出していただいている上場者の皆さんにとっても魅力的で、みんなが楽しめるセールにしていきたいです」
と、充実した表情で2日間を振り返った。
(文:村本浩平)
注記:金額は全て税抜き
2020年7月14日20時30分
(JRA-VAN)