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【セレクトセール2019】2日目の結果

まるでデジャブを見ているようだった。この当歳セクションの最初に上場してきたのは、マラコスタムブラダの2019(牡、父ハーツクライ)。実は前日の1歳セクションの最後に上場され、2億3000万円という高い評価を受けた、マラコスタムブラダの2018(牡、父ハーツクライ)の全兄弟。毛色や流星、そして鑑定台の後ろには我が子の姿を見守る母の姿こそあれど、父ハーツクライを彷彿とさせるような、軽さを感じさせるロングボディは兄と瓜二つだった。

 1億6000万円(落札者は猪熊広次氏)という評価額こそ、その兄には及ばなかったが、この当歳セクションを活気づけるにはまたとないスタートとなった。

 7月8日と9日の両日、苫小牧市・ノーザンホースパーク特設会場で開催された「セレクトセール2019」(日本競走馬協会主催)。大商いに終わった前日の1歳セクションに続き、この日の当歳セクションでは216頭の当歳馬が姿を見せた。

 セリに先駆けて、午前8時から行われた比較展示では、母と共に森林馬道でたたずむ上場馬の姿は実にほほえましいものがあったが、生まれてまだ数ヶ月の馬たちが、鑑定台に上がると500万単位、時には1000万単位でその評価を上げていく。

 マラコスタムブラダの2019に続き、ロードカナロア産駒のキャリコの2019(牡)を1億5000万円で野田みづき氏が落札。その後も上場されてきたロードカナロア産駒は軒並み高い評価を受け、アゲヒバリの2019(牡)が2億1000万円で小笹芳央氏が落札。小笹氏はアドマイヤテンバの2019(牡)も2億7000万円で落札している。

 アドマイヤテンバの2019の落札後に記者会見に姿を見せた小笹氏は、

「去年の当歳セリではキングカメハメハの産駒のセリに参加したので、今年はロードカナロア産駒の層を厚くしたいなとの思いがありました。産駒は総じてスピード能力に秀でていますし、キングカメハメハだけでなく、ルーラーシップも含めてこの父系の産駒のセリに参加してきました。ゆくゆくは種牡馬となるような馬を手に入れられたらと思っていますが、この馬たちもそうなってもらいたいです。」

 と期待を寄せていた。同じロードカナロア産駒ではダイワミランダの2019(牡)が1億1000万円(落札者は二木英徳氏)。キングカメハメハの産駒ではラスティングソングの2019(牡、父キングカメハメハ)が1億9000万円(落札者は(株)スリーエイチレーシング)、ソーメニーウェイズの2019(牡)が1億7000万円(落札者はY’s consignment sales)で落札とミリオンを超えるような取引馬も相次いだ。これは競走馬としての成績だけでなく、種牡馬となったときの期待値も取引額の中に入っていると言えそうだ。

 高額の落札が期待される上場馬が鑑定台に姿を見せると、会場が一瞬、静寂に包まれる。この当歳セクションでまず静寂に包まれた瞬間は、この日、牡馬では最初のディープインパクト産駒となるタイタンクイーンの2019(牡)が姿を見せたときだった。1億円のお代が鑑定人から告げられると、即座に会場から響いたのは「3億円!」との声。その後は息つく間もなく4億円まで数字が上がっていったが、静寂に包まれていた会場には、スポッターのコールが響く度にどよめきが響いていた。

 電光掲示板の4億7千万円の数字が反転した時、会場には拍手が鳴り響く。その瞬間にタイタンクイーンの2019は、セレクトセール史上4番目となる高額落札馬となった。

落札者となったのは、前日の1歳セクションでも最高額馬となるミュージカルウェイの2018(牡)を3億6千万円で落札していた近藤利一氏。前日と同様に管理を予定する友道康夫調教師と共に会見に応じた近藤氏は、

「今日のセリで一番いいと思っていたのがこの馬でした。この馬だけは欲しいと頑張りました」

と会心のセリに笑顔を見せた。この後もディープインパクト産駒には一瞬の静寂の後に、活発な取引の声がかかり続ける。ヤンキーローズの2019(牝)は、この日の牝馬では最高額となる2億1000万円で金子真人ホールディングス(株)が落札。ベネンシアドールは2億9000万円で(株)ダノックスが落札と、3頭のダブルミリオンホースを含め、6頭のミリオンホースが送り出されている。

 また、この世代が初年度産駒となる新種牡馬の産駒からもミリオンを超える評価を受ける取引馬が誕生。父キタサンブラック、母は年度代表馬を送り出していることで注目を集めたドナブリーニの2019(牡)は、1億6000万円でHIROKIカンパニーが落札。このセールに上場された新種牡馬では最も多い13頭の産駒が上場されたドレフォン産駒ではアドマイヤセプターの2019(牡)が、2億5000万円で東洋木材が落札している。その他の新種牡馬ではイスラボニータ産駒のカラフルマーメイドの2019(牡)が3100万円で村田能光氏が落札。サトノアラジン産駒のシースプレイの2019 (牡)が5600万円で(株)サトミホースカンパニーが落札されるなど、初年度産駒たちへの期待がうかがえる取引が行われた。

 途中まで90%を超えていた売却率は、その数字を割り込むこともあったが、それでもスポッターへのコールは鳴り止むことなく、それが産駒価格を押し上げていく。セリの後半に上場されたウォッチハーの2019(牡、父ドゥラメンテ)は1億3千万円で小笹芳央氏が落札。そして今年のセレクトセール最後の上場馬となったライフフォーセールの2019(牡、父ハービンジャー)は5000万の最初の一声からあっという間に数字を上げていき、1億を超えたどころか、ついには2億を突破。2億2000万円で落札者である大塚亮一氏の元にハンマーが落とされた。

 この当歳セクションの落札総額は97億8400万円(前年は82億5750万円)となり、落札率の89.8%(前年は88.7%)、1頭辺りの平均価格約5043万円(前年は約4028万円)と、1日開催となった当歳セクションにおいて、全ての面で過去最高の数字を塗り替えた。

 1歳セクションと当歳セクションを合わせた落札総額も、史上初めての200億円越えとなる205億1600万円を記録。1998年の開催時は48億5100万円だったことを考えると、22年の月日を経て、なんと4倍強まで取引額をあげたことともなった。

日本競走馬協会会長代行を務める、吉田照哉氏(社台ファーム代表)は、

「総売上で過去最高を記録したことを含め、世界中を見渡してもこれだけの競走馬市場は無いと思います。現実にここからGJ馬を始め、多くの活躍馬も送り出されていますが、今後は世界の競馬に通用する馬も、この取引馬の中から現れてくると思います」

 と笑顔で話していた。(価格は全て税抜き)

2019年7月9日20時35分
(JRA-VAN)


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